成年後見のはなし~ご本人死亡後に預貯金を払い戻す?~

掲載日:2018.08.06


ご本人がお亡くなりになったことが明らかになると、原則として預貯金の取引は停止されます。いわゆる口座の凍結ですね。

ただ、このこととは関係なく、施設費や賃料など、ご本人の生前に発生した費用は通常通り請求されてしまいます。
また、口座振替になっていた各種費用の支払も、口座の凍結された結果別途請求されることになります。
このような各種の支払いは、ご本人のための費用なので、ご本人の預貯金を払い戻して支払いをしたいところです。

しかし、皆様ご存知かもしれませんが、通常、相続手続が完了するまでは預貯金を払い戻すことはできません。
実は、これまでは、成年後見制度を利用した場合でも同じ問題があり、ご本人が亡くなると同時に成年後見人の権限が消滅してしまい、相続人だけでなく成年後見人でも預貯金の払戻手続を行うことができませんでした。

それが、平成28年に民法が改正されたことにより、成年後見人は、債務の支払い等ができるようになり、そのための預貯金を払い戻すこともできることとなりました。
ただし、預貯金の払い戻しのためには家庭裁判所の許可が必要です。
例えば、費用の支払が必要な場合、①家庭裁判所の許可を得る→②預貯金を払い戻す→③費用を支払う、という流れになります。

勘違いしてしまいそうですが、家庭裁判所の許可が必要なのは、あくまで債務の弁済等のために「預貯金を払い戻す」場合です。
つまり、管理している現金での債務の支払いに許可は不要なのです。・・・少し分かりにくいですね。

※本記事は、成年後見制度のうち、成年後見のみに限定した記載であり、保佐・補助は含みませんのでご注意ください。

では、また次回お楽しみに!

司法書士 たつみ