家の名義変更のはなし~同じ人なのに別人扱い?~

掲載日:2018.05.21


当初複数の名義人で所有していた(共有していた)不動産が、最終的に単独の所有者のものとなることがございます。

例えば、図のように、太郎さんと小太郎さん親子が2分の1ずつの割合で不動産を取得した後、太郎さんが亡くなり、小太郎さんが太郎さんの権利(持分2分の1)を取得したような場合です。
こうなると、小太郎さんは不動産のすべての権利を有するので、名実ともに「所有者」となります。
元々所有者だろう、と疑問にお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、登記上は、複数の方が共有している場合はそれぞれを「共有者」、単独の場合は「所有者」と区別しているのです。

さて、問題は、上記のように権利を分けて取得した場合に、小太郎さんが「共有者」とされることがあることです。
なぜそのようなことになるのかというと、主な原因は「住所の不一致」によるものです。
図のように、当初小太郎さんがAという住所で権利を取得したとすると、登記上は住所Aの小太郎さん(共有者)が誕生します。そして、その後小太郎さんがBに住所を移したとします。
その後太郎さんが亡くなり、小太郎さんが太郎さんの権利を取得したとしましょう。ただ、この時の小太郎さんは住所Bの小太郎さんです。
つまり、このまま登記手続を行うと、住所Aの小太郎さんと住所Bの小太郎さんが別人と認識され「共有者」と登録されてしまうのです。
同一人物なのに共有者になるとは、何とも馬鹿げた話だな、と思いますが、登記が厳格な手続である証明とも言えるのではないでしょうか。

なお、このような状況を防ぐためには、予め小太郎さんの住所をBに変更しておく必要があります。
これにより、既存の小太郎さんの住所と、新たに権利を取得する小太郎さんの住所が一致しますので、手続完了後は「所有者」と記録されることになります。
しかし、共有者・所有者どちらで表示されても、あくまで登記上の話であり、不動産のすべての権利を有していることには変わりませんので、実際には影響は少ないでしょう。
ただし、共有者と記録されることで少し登記手続が複雑になることがありますので、ご自身で手続される場合は注意が必要です。

では、また次回お楽しみに!

司法書士 たつみ